事例研究 | 広告]
|
事例の件名 | ケーススタディ: 幻聴が聴こえ、その話を聞かされる周囲が迷惑している |
状況や現象 | Lさん、男性42歳。大学卒業後、国家公務員として採用になり省庁勤務。勤務して間もなく、声が聴こえるようになった。その場にいるほかの人には何も聴こえないが、本人は確かに聴こえている、とのこと。内容は、「宇宙人と交信していた」「地平線の向こうからの呼びかけが聴こえる」など荒唐無稽なもの。本人はいたって真剣で、幻聴とはとらえていない。幻覚のようなものも見えているらしい。
仕事には全く支障はなく、精力的に業務はこなしている。しかしいつも幻聴の話を周囲の同僚にしていて、周りが気味悪く思っている。
上司などの強い勧めがあって数年前に精神科を受診、統合失調症との診断が出た。 |
本人が困っていること | 幻聴, 幻視, 変な言葉が聞こえる
本人にとっては幻聴ではなく、普通の話をしているだけなのに、それをおかしく思う周囲に対し、不信感を抱いている。
他に人によっては、幻視が見えることもあり、実際にはLさんよりも、日常生活に支障がでることがあります。 |
周囲(上司・同僚・家族等)が困っていること | 周囲の理解不足
仕事には支障が出てはいないが、いつも変な話をしているので周りが迷惑している。
統合失調症の診断が出ていることは、職場にも伝えられているが、周囲は「変な人」だけでは片づけられない気持ちになっている。 |
考えられる病気の可能性 | 統合失調症 |
当人や周囲がやったことがいいこと、解決のヒント | 精神科 統合失調症の診断が出て、通院と服薬治療中。
通院して服薬しますが、なかなか完治が困難なケースもあります。この例のように、仕事は問題なくできる場合もあります。しかし、周囲は気持ち悪く感じたり、話が通じなかったりしてコミュニケーションをとりづらくなりがちです。逆に、幻聴や幻視のために、QOL(Quolity Of Life)が落ちて、仕事も難しいこともあり、ケースバイケースです。
最近では、新しい治療薬がでてきていますので、比較的治療期間が短くてすむ場合もあります。治りにくい場合は、セカンドオピニオンを他の病院でもらったりするのも解決策の1つです。
Lさんの例では、「宇宙人」ですが、人によっては「妖精」「魔法使い」「鬼」「天使」「神様」「小人」など宗教的なイメージや伝説的なイメージのキャラクターに相当することがあります。こういった霊的な事柄を当人が話すようになったら、すみやかに精神科を受診を勧めるべきです。
この例では、統合失調症ですが、霊的な現象の中には、脳腫瘍など外科的治療が必要なものもあります。側頭葉に異常があると、こういった霊的な幻聴や幻視、体験を語りがちです。 |
備考 | なお、幻聴に似たものに、「空耳」があります。そちらは、加齢などで耳が悪くなったり、風の音がなにかの曲に聞こえたりするような、勘違い的なものです。これは、多くは健康な人にもおきますので、問題はありません。
統合失調症での幻聴は、「あれをしろ」「これをしろ」的な、比較的具体的な命令などを含むことが多く、「空耳」とは違いますので、家族や職場の周囲の方は、「明確な言葉かどうか」で判断して、受診を勧めてください。
統合失調症の場合、どうしても当人が不思議なことを語りますので、周囲に偏見を呼ぶことが多々あります。通院すれば仕事も続けられる方もいますので、周囲への理解と啓蒙なども必要になるでしょう。 |