事例研究 | 広告]
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事例の件名 | ケーススタディ: 職場でうまくコミュニケーションがとれず、仕事に支障が出てしまった |
状況や現象 | Iさん、女性31歳。市役所の臨時職員。大学院を出てから、いくつかの仕事に就いたが、職場で同僚や上司とうまくコミュニケーションがとれず、周りから疎まれるようになることが多く、なかなか長く勤めることができない。長く続いたのが1年半。
仕事で連携が取れないことが増え、周囲が受診を勧め精神科を受診、アスペルガーの診断が出た。 |
本人が困っていること | コミュニケーション苦手
今の職場でも、自分をうまく表現できず、周囲の気持ちを理解することも難しく、孤立してしまう。仕事も言われたことだけはこなすが、自分から進んで仕事をすることができない。
別の場合には、本人にはあまり困り感はない。ただ職場でコミュニケーションがうまくいかず、続けて勤められないので何とかできないかと漠然と思ってはいる。 |
周囲(上司・同僚・家族等)が困っていること | 指示したことができない; 失敗を報告しない、看過するなど; 挨拶、謝罪、お礼なども言わない; いちいち丁寧に指導説明しないと仕事や社内規程を理解していない
当人よりも、仕事の連携がうまくいかないので、なんとなく職場の雰囲気が悪くなってしまっている。
今風にいうと、「空気が読めない」や「行間が読めない」などで、口頭、メール、文書などでもなかなか、コミュニケーションが取れないため、上司もこういった人材に慣れていないと扱いづらいと感じてしまいます。同僚も、どう助け船を出していいかわかりませんし、当人のいうことをすべて真に受けていると、振り回されてしまいがちで、チームや職場のほうが困ってしまいます。 |
考えられる病気の可能性 | アスペルガー; 発達障害 |
当人や周囲がやったことがいいこと、解決のヒント | 心療内科・精神科 受診・服薬もあるが、ソーシャルスキルトレーニングなども重要。
特に、職業選択では、当人の知能程度やアスペルガーの軽~重の程度にあわせて、職業の特性を理解して仕事を選ぶ、業務環境を選ぶなどが望ましいでしょう。そうしないと、この事例のIさんのように、職場を転々と転職しなければならず、大変生きづらい人生になりがちです。
1人でこつこつ実験するような研究職や集中して、名刺などのデータを入力をするような仕事、記憶力が高ければ図書館司書など専門性を活かす仕事などにつくのがよいと思われます。
集中力だけでなく、パラレルでスケジュールをこなす、お客様とのコミュニケーションが多いようなシステムエンジニアや、お客様とさまざまなコミュニケーションが発生する営業職や接客サービス業などには、向いていないことが多いでしょう。
一般の心療内科や精神科では扱っていないことも多いので、専門医や専門のトレーニングプログラムのある病院を選ぶのが大切です。プログラムでは、同じアスペルガーの方とディスカッションをしたり、料理のような協調性の必要な活動で、社会性訓練をすることが多いようです。 |
備考 | 発達障害の一種ですが、知能の遅れのある人と、普通~知能が高い人までさまざまです。ペーパー試験などの点数は高い人もいますので、偏差値の高い大学を卒業していたり、大学院など高等教育を受けていたりしますので、20代ではわからなかったりします。
最近、研究が進んできたり、障害の認知度が上がったりしてきましたので、小学生くらいで判明することもありますが、二十年以上前ならば、「ただ会話が下手な子」という風に扱われるだけで、下手すると35,6歳くらいまで、わからないこともしばしばです。
最近では、中学高校生のうちから特別クラスでトレーニングしたり、大学で特別な訓練や就職活動支援をしてもらったりするケースもあります。
原因は明確ではありませんが、家庭環境や生育過程での問題が関連していることもあるといわれています。カウンセリングでは、両親や配偶者など、近親と一緒に受診することが薦められています。親がアスペルガーの場合、家庭環境・習慣が同じですので、遺伝ではありませんが、子供もアスペルガーになる可能性が高いといわれています。
また、同じく生きづらさを抱えている他の発達障害の配偶者と共感しやすいので、発達障害の夫妻や恋人同士ということになることもあります。
同じ発達障害の中でも、ADHDと二重の障害を抱えている方もいます。 |