事例研究 | 広告]
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事例の件名 | ケーススタディ: アスベルガーと抑うつ状態と診断された |
状況や現象 | Nさん、男性24歳。ネットゲームなどが好きで、大学卒業後、ゲームメーカーに就職した。最初の1年ほどは、素直で遅刻欠勤もなく、まじめに見えていた。
しかし、2年目になると、多忙な業界のせいか、疲れるとメール連絡を読めなくなったり、せっかくとったメモを見返さないなどして、仕事上の失敗が続くようになった。3,4歳年上の先輩とも口を利くことが減り、孤立気味になっていった。先輩から、上司の課長に様子がおかしいので、面談を依頼したところ、高校のときにひきこもりをしたり、小学校のときにいじめをされたりして、家族も両親の不和など、さまざまな厳しい状態を吐露するようになった。上司のほうから、心療内科に相談するように勧めた。 |
本人が困っていること | 周囲から理解されない, コミュニケーションに問題がある
当初はまじめで、素直なイメージだったが、だんだん、周囲に気配りするのが下手で、「空気がよめない」「自分に固執しすぎる」などといわれやすいタイプ。上司や先輩の助言も聞かないなど、柔軟性が低いと思われることもある。
仕事上、メモを取るのだが、読み返しても自分でもよくわからなかったり、読み返しそのものをしないなどで、うまく仕事を進められなくなって、先輩や上司に怒られることが多くなり、当人も困っている。比較的集中する入力のような仕事はこなせるが、並列的な仕事だと苦手。
小学校、中学校、高校などからも、いじめにあう、孤立しがちで、友達とのつきあいもうまくいかない、友人の数も少ない、時にはひきこもりになるなどの経験がある。 |
周囲(上司・同僚・家族等)が困っていること | 指示したことができない; メモも取らないか、取っても実行しない; 勤怠が急に悪くなった; 挨拶、謝罪、お礼なども言わない; 犯罪意識、倫理意識が低い; いちいち丁寧に指導説明しないと仕事や社内規程を理解していない
一般常識のある上司やリーダ的な先輩視線で見ると、チームワークに欠ける、コミュニケーション能力が低いなどに見られます。時には、モラル感の低い行動を取る人もいます。社内ルールや就業規則を自己都合で解釈したりするため、指導しにくく、理解してあげることができないことが多くあります。 |
考えられる病気の可能性 | アスペルガー; 発達障害 |
当人や周囲がやったことがいいこと、解決のヒント | 内心、職場で辛さや孤立感を感じており、上長である課長から状況が普通でないということで、精神科を受診、幼児期の親の不和、離婚などから、学生時代の孤立感などから、最終的にアスペルガーと抑うつ状態を併合していると診断された。
このように、アスペルガーの場合は、「空気が読めない」などと、周囲の理解が不足したり、しわ寄せもあるため、その職場で居づらくなり、うつ病などになり、併合的な病気になりがちです。
当人に自覚症状がない場合は、上司が家族などと相談して、専門医や産業医に行くように促しましょう。ただし、夫婦そろってや親子そろって同じアスペルガーの発達障害である可能性も高く、促しても逆切れする人もいます。客観的な事実を記録しておき、指摘するようにして、カウンセリングに誘導します。 |
備考 | 軽度なアスペルガーであれば、あまり人とのコミュニケーションが発生しにくい職種について、能力を発揮できます。しかし、営業やシステムエンジニアのような、顧客とのコミュニケーションが多めの仕事だと、職種マッチングとして厳しいでしょう。
たとえば、接客がほとんどないような、パソコン入力中心の仕事や図書館司書、博物館の学芸員などの仕事について、がんばっている方もいます。
職種転換で異動できる場合は、してあげるのも手です。しかし、ニッチなビジネス展開をしている小企業では、雇用しつづけるのは厳しいこともありますので、再訓練を支援してやり、別の仕事に転職したほうがよいこともあります。
また、アスベルガーで問題なのは、社会規範が低く、危険ドラッグや麻薬などに興味本位で手を出したり、コンプライアンス意識が低いために、データを盗用することなどを隠していることがあることです。こうなった場合、社内処罰規定に照らし合わせて、公平に一定の懲罰的な処分をするしかありません。
心療内科、精神科の中でも発達障害が得意なところに、通院治療、グループ活動などで社会復帰をめざすのがよいでしょう。 |